【Vol. 04】地域で支える輪、その名は「すみのわ」

輪旅第十五弾、今回は墨田区のクリエイターや福祉作業所などのネットワーク、行政・企業・お店・生活者と力をあわせ、自主生産品のデザイン・製作・販売・PRなどをお手伝いし、障がいのある人々を支えるプロジェクト「すみのわ」をディレクションされるデザイナーの″關 真由美″さんにインタビュー。

全国障害者アート公募展 みんな北斎」で審査員を務めた学芸人の二人は当時を振り返りつつ、お話を伺いました。

ふ:葛飾ふとめ

ぎ:葛飾ぎょろめ

關:關 真由美さん

地域の力で支援しています。

デザイナー 關 真由美さん

ふ:葛飾ふとめ
ぎ:ぎょろめの
ふ&ぎ:輪になって北斎!
ぎ:さあ始まりました。本日はですね、「すみのわ」というあるプロジェクトのディレクションをされている「關 真由美」さんにお越しいただきました!よろしくお願いいたします。
ふ:よろしくお願いいたします。
関:よろしくお願いいたします。
ぎ:それではいくつかご質問させていただきますね。まずは今回のテーマである「すみのわ」ですが、こちらはどんなプロジェクトなんでしょうか?
関:はい。「すみのわ」とは墨田区の福祉作業所に通われている障がい者の方の工賃をアップするために自主生産品作りを支援しよう、というプロジェクトです。

ぎ:工賃アップということは、私たちでいうギャラアップ!ということですね。このプロジェクトはどういったことから始まったのでしょうか?
関:これはですね、墨田区の障害者福祉課から「すみだクリエイターズクラブ」という墨田区在住在勤のクリエイター集団へ業務委託していただいたところから始まりました。
ぎ:なるほど。關さんはその「すみだクリエイターズクラブ」のメンバーであって、この「すみのわ」だとどういった役割をされているんでしょうか?

関:私はですね、区内の7つほどの施設をまわり、利用者さんと一緒にこちらにあるようなアクセサリーなどを利用者さんと一緒に生産しています。それからこれらの生産品の材料となる端材を区内の町工場から集めさせていただいております。
ぎ:その7か所でそれぞれ異なるものを作っているんですか?
関:そうですね。皆さん障がいの程度によってそれぞれできることが違うので、施設へ見学に行かせていただいた上でどんなものが作れるか提案しています。実際に生産するときには利用者のみなさんができるまでサポートしていますよ。

 
ぎ:なるほど!みなさん得意不得意なことがありますもんね。
關:そうですね。主に精神障がいや知的障がいのある方と一緒に生産しているんですが、元々その方たちが好きだったものや得意なことから発想して、こうした商品を生み出しています。
ぎ:得意なことを活かして商品に結び付けられるんですね。
關:はい。おっしゃる通りです。
ぎ:めちゃめちゃ握るのが得意な方たちがこのダルマを作っていたりするわけですね。
一同:(笑)

同じものは生まれない。

ぎ:今回はいくつか生産品をご用意いただきました!ご紹介をお願いできますか?
關:はい。まずはこの「手ごねダルマ」です。製本会社が区内にいくつもありまして、製本の時って紙を裁断する工程があります。その裁断時に10~15cm程度、端っこの紙が余るんですよ。その紙を利用者の方々でシュレッダーを使って細かくし、水に溶かすと紙粘土ができるので、それを丸めたい人が丸めて作っています。
ふ:あ、丸めたい人は丸めるし、シュレッダーをかけたい人はかけるみたいな?
關:そうですね。
ぎ:丸めたい人がまるめてこねたダルマだから「手ごねダルマ」なんですね。カラフルで可愛いです。
關:このダルマの色は紙の色なんですよ。裁断した紙の色がそのまま出ています。

ぎ&ふ:へー!
ふ:着色をしているわけではなくて、元々の端材の色なんですね
關:そうですそうです。
ぎ:このダルマの形や大きさも同じものがないのでそれぞれ個性があって可愛いですよね。
關:ありがとうございます。たまに巨大なダルマができたりしますよ・
一同:(笑)
關:それから、このダルマに使われている金色の紙は「片岡屏風店」さんから分けていただいたものを使用しています。

ぎ:あー!私たちも以前インタビューさせていただいたときに食パンの耳みたいに分けていただきました(笑)

ふ:うふふ。

關:全て障がい者の方の工賃が上がるのならと、ご厚意で提供していただきました。

ぎ:こちらはなんですか?

關:はい。こちらは「久米繊維工業」さんから分けていただいたTシャツの端材で包んだマグネットです。Tシャツって脇の部分を型で抜く様でですね、それを定期的に分けていただいています。

ぎ:通常なら捨ててしまうような素材をこうした商品として活用できているんですね。

關:そうですね。

ぎ:こちらの革素材のものはなんでしょうか?
關:墨田区の産業といえば皮革産業ですので、こちらはピッグスキンを使ったネックレスです。余った革を型で抜いて使用しています。この革の染色を利用者さんがやっていますよ。その染色した革を加工してこのようなネックレスに仕上げています。

ぎ:素材がちゃんとしていますし、オシャレにデザインされていますよね。手がこんでるな…。こちらの灰色のギザギザした葉っぱのような形のものはなんでしょう?
關:これはお酒の瓶のラベルに関係している廃材なんです。瓶にラベルのシールを貼るときって、こういった厚紙を使ってプレスするんですね。プレスに使った厚紙はプレスが終われば不要なのでそれを分けていただきました。いまお二人が付けているブローチがその厚紙を使用した完成品ですね。

ぎ:あ、これがそうなんですね。
關:はい。厚紙をメリヤス生地のサンプル帳で使われるような端の生地で包み、「小倉メリヤス製造所」さんからいただいた糸でぐるぐる巻いて作っています。
ぎ:あ!このギザギザのところにうまく糸がはまるわけですね!
關:そうなんです。このギザギザのおかげでスムーズに糸が巻けるんですよ。

ぎ:これも端材なんですか?とてもキラキラして立派な糸ですけれども。

關:縫製するときに糸を多めに調達するらしいんですが、最後はどうしても何本か余るらしく、それを分けていただきました。
ぎ:なるほど。このブローチを横から見ると中心が盛り上がっているんですが、レリーフみたいでとっても可愛いですよね。
關:そうですね、真ん中に糸が集結するので盛り上がる形になっています。

ぎ:糸の色なんかも利用者の方が自分で選んで巻いていらっしゃるんですか?
關:はい。皆さん自分の好きな色を選んでいたり、綺麗に見える糸の組み合わせを記録している方もいらっしゃいましたね。
ぎ:お話を聞いていると、なんだか作家さんや職人さんが作るこだわりの逸品みたいな作り方ですよね。一点ものの暖かい商品に感じます。
關:そうですね。同じようなものは作るんですけど、同じ形や同じ色のものが出てこないところが面白いですね。
ぎ:それぞれ好きなものを作るから商品に思い入れができていいですね。…しかしまあ、このダルマ可愛いよね?
ふ:そう!そうなのよ!
一同:(笑)

やりたい気持ちを大事に。

ぎ:これらの自主生産品を作るときはどんなところにこだわっていらっしゃるんでしょうか?
關:そうですね…。作り手である利用者の方に向けてなんですが、あまり受け付けないような集中できなそうな時は作業を一旦やめて別の作業に切り替えたりと、その時の状況や環境に注意しています。彼ら彼女らが作業をやりやすい様に、というのが私のこだわりポイントですね。
ぎ:なるほど、作業としてただ単に任せるわけではなくてベストな状態で作業しやすいように気を付けていらっしゃるんですね。
關:はい。あとは利用者の方それぞれがやりたいと思った作業を大事にしたいので、なるべく分業化しています。

ぎ:一人が商品の最初から最後までを作るわけではなくて、「こねるだけ」とか細かくわけて取り組んでいるんですね。
關:そうです。染色したい人は染色だけとか、型を抜きたい人は型だけ抜くとかですね。
ふ:へー!面白いですね!デザイナーさんが最初から最後まで仕上げるのとは違って、色んな方の気持ちが入って作った1点ものですからそれもまたとても魅力的ですよね。

ぎ:逆に誰もやりたがらない作業工程なんかは出てこないんですか?
關:一部ありますね(笑)。たとえば、接着剤でとめる作業とか。
ぎ:地味な作業は不人気なんだな…。
ふ:(笑)
關:最初の頃は施設の職員さんがそういう作業やっていましたけど、最近は利用者さんの力でやってますね。
ふ:なるほど。誰も取り組まなそうな工程は職員さんフォローしているわけですね。
關:そうですね。好きな作業だとみなさん黙々と作業されてもの凄い集中力を発揮するので、その手を止めて別の工程をやっても中々上手くはいかないんですよ。

ぎ:適材適所って言葉がありますが、好きなことや得意なことで取り組むともしかしたら効率がいいのかもしれませんね。たとえば、ふとめには頭を使わせずに食べる作業をさせよう!とか。
ふ:うん、食レポね。
一同:(笑)
ぎ:作業が慣れてくるとやはりできることも増えていきますか?
關:はい。最初は一、二工程くらいしかできなかった方でも慣れてくると一通りの作業をこなせるようにもなってきましたね。
ぎ:生産ラインが一通り見えると覚えやすいのかもしれませんね。

想像もつかないやり方で。

ぎ:關さんが自主生産品のサポートをされるようになって何か嬉しかった体験などはありますか?
關:やっぱり…意外なものが生まれてくるときですね。
ぎ:というと?
關:たとえば、こちらの「ポチ袋」。ウレタンの型抜き屋さんで出たウレタンの端材でスタンプを作って、自由に押してもらったんですね。色のチョイスやスタンプの重ね方がデザイナーの私でも思いつかないやり方をするんです。

關:あ、そうなんです(笑)。意外な組み合わせややり方で商品が生まれた時が嬉しい瞬間ですね。
ぎ:本当に思いつかないような驚きの方法で表現しますよね。「みんな北斎」という障がい者アート展が昨年行われて、私たちも審査員として参加したんですが、固定概念がないというか予想を裏切られる表現の作品がたくさんありました。
關:そうなんですよね。あと不思議なのが、商品を作るのに必要な道具を渡して作り方を説明するとデザインも含めてパッと完成させちゃうんですよ。その創作意欲みたいなものにいつも驚かされます。

ぎ:なにかこうプランを練ったりデザインを考えたりはしないんですか?
關:何か練っているようには見えませんでしたね。一瞬の感覚なのか、迷わず色を選んだりスタンプの配置を決めたりしていました。
ぎ:天性のものですかね…。私はめちゃくちゃ下書きしてしまいます。
ふ:私は結構すぐ描いちゃいますね。
關:お、芸術家肌なんですね。
ぎ:じゃあ、そんな利用者さんの取り組む姿を間近で見て關さん自身の良い刺激にもなっているわけですね。
關:そうですね。仕事じゃなかったら横で一緒に作業したいですね。
一同:(笑)
關:本当に楽しそうに作業されるので、そういう姿を見ると嬉しく思います。

培ったものを伝えていく。

ぎ:「すみのわ」のこれからの活動予定はなにかありますか?
關:はい。福祉作業所の利用者さんが生産する商品を扱うセレクトショップがありまして、こちらは東京都が運営しているんですけれども、そちらで「すみのわ」の商品を販売していただいていますね。あとは「すみだ北斎美術館」のショップでも販売していただいてます。
ぎ:手ごたえはいかがですか?
關:自主生産品を作っている利用者の方からは「工賃がアップしたよ!」とか、そういうお声をいただいていますね。
ぎ:目に見えて頑張った成果が出るわけですから、利用者の方々は嬉しいですよね。
ふ:前向きな気持ちになりますもんね。

關:はい。あとは今取り組んでいるのは月1回、無印良品の有楽町店さんで障がいをお持ちの方が一般の方に向けてこういった商品の作り方をレクチャーする講座を開催しています。
ふ&ぎ:いいですね!
關:ありがとうございます。やっぱりみなさん緊張されるんですが、講座が終われば達成感でいい表情をされるんですよ。
ぎ:培ってきたものを誰かに伝えてつなげていくってとても素敵だと思います。
ふ:うん。チャレンジする機会があるっていいね。
關:はい。私たちが教えたものを利用者さんが誰かに教えていくっていう、いいサイクルを構築していけたらいいなとは思いますね。
ぎ:まさに「輪」が広がる「すみのわ」ですね!
ふ:あら~、いいこと言うわ~。その通りね!
ぎ:一方で、今後何かに挑戦したい!というようなことはあるんですか?

關:はい。ノベルティ事業を展開したいなと思っています。
ぎ:ノベルティというと?
關:どちらかというとこういった商品製作に向いていない方、自由に絵を描きたい方ってたくさんいらっしゃるんですね。その方たち向けにノベルティを製作したいと思っています。たとえば、こちらのメモ帳。この表紙は利用者さんが自由な発想で描いた電車の路線図なんですが、こういった作品を商品の表紙などに活用していきたいですね。
ふ:自由に描いた作品を色んなグッズにデザインしていくってことですね。
關:はい。そうすることで支援の輪がもっと広がっていくかなと考えています。
ぎ:もう本当にその取組から作家が生まれるかもしれないですよね。
關:そうなったら嬉しいですね。
ふ:この路線図は東京の路線図ですか?
關:そうです。実際の東京の路線図と照らし合わせたんですが、結構緻密に再現されていて合っていました。驚きましたよ。

ぎ:なにか一つのことが抜きんでていることがありますよね。この「すみのわ」からビッグなアーティストが誕生したらいいな。
關:そうですね。我々では描けないようなものを描きますから、ただの落書きで終わらせるのではなくてひとつの新たな仕事として成立させたいですね。
ぎ:発掘するっていうのは大事ですよね。驚くような作品があるのにみんな知らないっていうことも多々ありますし…。そこで關さんが「youやっちゃいなよ!」って背中を押す役割なんですよね。
一同:(笑)
ふ:關さんの立ち位置がとても分かりやすいね(笑)

お買い求めはお近くのスポットで。

ぎ:それでは最後に記事をご覧の方へ向けてメッセージをお願いいたします。
關:はい。「すみのわ」では墨田区の町工場から出る端材や廃材を分けていただきまして、障がいをお持ちの方々が今回ご紹介したような商品を生産しています。現在ですと錦糸町の「KURUMIRU(くるみる)」というショップや「すみだ北斎美術館」などで商品を購入することができます。ご興味のある方はぜひお買い求めいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 ぎ:ありがとうございました。今日ご紹介いただいた商品の他にも魅力的な商品がありますから「you買っちゃいなよ!」。
一同:(笑)
ぎ:關さん、どうもありがとうございました。
ふ:ありがとうございました。
關:ありがとうございました。

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墨田区

恒例の「人つながる墨田区」ポーズで幕を閉じた輪旅第十五弾。

今後、「すみのわ」から生まれる商品を要チェックですね。

次回の輪旅第十六弾は2018年1月下旬を予定!

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