【Vol. 08】屏風に込められた心意気

輪旅第八弾、今回の舞台は第六弾の舞台でもある墨田みどり保育園。
五色絢爛極楽霊鳥出現北斎鳳凰図のタイトルを相撲字という文字で書かれた、相撲甚句講師の下家義久さんにお話を伺いました。
相撲甚句とは大相撲の巡業などで披露される七五調の囃子歌のこと。下家さんはその相撲甚句の一環として相撲字を園児たちに教え、そのつながりで鳳凰図のタイトルを書かれました。鳳凰図のタイトルに込められた意味とは一体どんなものでしょうか。

“相撲甚句”の一環で“相撲字”を教えています。

相撲甚句講師 下家義久さん

ふとめ:葛飾ふとめ
ぎょろめ:ぎょろめの
ふとめぎょろめ:輪になって北斎!
ぎょろめ:さあ、はじまりました「葛飾ふとめ・ぎょろめの輪になって北斎」、今回が第八弾となりまして、「墨田みどり保育園」にお邪魔しています。
ふとめ:お邪魔しています。

ぎょろめ:今回お話を伺うのはこの保育園で相撲甚句を教えていらっしゃる下家義久さんです!それでは下家さん、よろしくお願いいたします。
ふとめ:よろしくお願いいたします。
下家さん:よろしくお願いいたします。

ぎょろめ:私たちは以前、かつての園児たちが卒園制作で取り組んだ「鳳凰図」について伺いました。最終的に屏風になったその作品のタイトル“五色絢爛極楽霊鳥出現北斎鳳凰図”という文字をお書きになったのが下家さんでいらっしゃるんですよね。
下家さん:はい、そうですね。当時の子供たちが素晴らしい作品を完成させたので、園長先生に何か書いてと依頼されたんですよ。
一同:(笑)
下家さん:ただ単に文字を書いても面白くありませんので、すみだといえば「相撲」と思いついて力強い印象を受ける「相撲字」を取り入れたんです。

ふとめ:前から気になっていたのですが、あの印象的なフォントは「相撲字」というんですね!
ぎょろめ:そもそも「相撲字」というのは何に使われるものなんですか?

下家さん:相撲に関すること全般に使われるんですが、主に番付で使われますね。黒々しく力強い印象は屈強な力士たちの戦いを表しているといわれています。だから肉太な文字というわけですね。
ぎょろめ:ダイナミックな「鳳凰図」にまさにうってつけの文字ですね。文字自体が力士のぶつかり合いを彷彿とさせますが、実際に書くときもき力をこめて書かれるんですよね。園児たちにも「相撲字」を教えていらっしゃるのですか?

下家さん:はい。「相撲甚句」の一環で教えていますよ。力強い文字にするために大地を引き裂くようなイメージで筆を書きなさいと園児たちに伝えていますよ。
ふとめ:気持ちを込めなさいということなんですね。
下家さん:そうですね。お腹に意識を集中させて気持ちを込めることが大切です。

“五色絢爛極楽霊鳥出現北斎鳳凰図”に込めた意味

ぎょろめ:そんな力強い文字で書かれた“五色絢爛極楽霊鳥出現北斎鳳凰図”のタイトルですが、このタイトルも下家さんが考案されたのですか。
下家さん:はい。あんなにも力強い大作ができたのは園児たちの力やご指導されている先生方の力はもちろんありますが、やはり我々の大先輩「葛飾北斎」があの作品を描いたからだと思ったんですよ。そんなことを思いながらタイトルの一つ一つに意味をこめてつけました。

解説
五色=文字どおりの5色に限らず、羽の色が多彩なこと。
絢爛=色彩がそれぞれに鮮やかで美しく輝いていること。
極楽=天国。
霊鳥=神秘の鳥。
出現=突然現れること。
北斎=日本が時代を超えて世界に誇る天才的絵師・葛飾北斎。
鳳凰=古代中国で最もめでたいとされていた想像上の鳥。
図=絵。

下家さん:「相撲字」でタイトルを書いたのは、北斎や子供たちのパワーに負けないようにという気持ちもありましたが、墨田区が両国国技館のある相撲の街でもあるのでとても相性がいいと思ったんですよ。
ぎょろめ:この組み合わせが必然かのように本当にピッタリですよね。
下家さん:ええ。それからタイトルに合わせて甚句前唄も作りました。本当は屏風にも載せたかったのですが、スペースの都合上省きました。こんな唄です。

甚句前唄
めでたャ 霊鳥 墨田の空に
五色ャ 絢爛 北斎招き

ふとめ:どんな意味なんですか?
下家さん:ちょっとこれを読んでみてください。
ぎょろめ:はい。

甚句前唄(訳)
ああ、なんとめでたく素晴らしいことでしょう。
神さまのお使いである鳳凰が墨田の空の上から
私たちをやさしく、また力強く見守ってくれています。
目にも鮮やかな極彩色の羽で全身を包まれた
この、神の世界からやってきた美しくありがたい鳳凰は、
我らが大先輩・葛飾北斎先生がその類稀な絵筆の力によって招いてくださったのです。

ふとめ:なるほど。私てっきり見た目をそのままタイトルにしているのかと思い込んでいたのですが、こんな意味や唄があってタイトルになっていたんですね。
下家さん:そうですね。いろんな方の心意気を込めようと思いました。

制作に携わったみなさんの心意気が素晴らしい。

ぎょろめ:中々聞けないタイトルについての秘話をお聞きしましたが、実際に屏風が完成したときにはどんな印象を受けましたか。
下家さん:本当にみなさんの心意気が素敵だなと思いましたね。卒園制作で一生懸命に取り組む園児たちやご指導なさる保育園のみなさん、それから模造紙を見事屏風に仕立てあげられた片岡さんの心意気が本当に素晴らしいと思います。

ぎょろめ:そうですよね。私たち、前回のインタビューで片岡屏風店さんにお話を伺ったのですが、改めて色んな方が関わって完成した作品なんだなと感じました。
下家さん:はい。今思い出したんですが、筆でタイトルを書くときに私の計算違いでタイトルの紙が屏風とちょっと合わなくなってしまったということもありましたね。
ふ:そうらしいですね。
一同:(笑)

片岡屏風店でのインタビューはコチラをチェック!

心意気が役に立てたら

ぎょろめ:下家さんは園児の卒園制作などで北斎の作品をご覧になっていると思いますが、葛飾北斎の魅力とはどんなものだと思いますか。
下家さん:やっぱり力強さや精密さだと思いますね。それからその心意気でしょうか。
ふとめ:力強さと精密さがあってなおかつ想いもこもっているってパーフェクトですね。
ぎょろめ:相撲と北斎で共通していることって何かあるんでしょうかね。
下家さん:取り立てて目立った共通項があるかは分かりませんが、力士たちは常日頃から稽古に励んでいますし、北斎は亡くなるまで描くことをやめなかった方ですから努力を続けるという意味では共通しているかもしれませんね。

保育園での相撲甚句教室の様子

ぎょろめ:なるほど、そうかもしれませんね。では、名残り惜しいですが遂に最後の質問です。下家さんは相撲甚句を通してさまざまなことを園児たちに指導なさっていますが、子供たちに一番うけとってもらいたいことは何でしょうか。
下家さん:どうしても甚句と関連してしまいますが、力士の様な力強さや我慢強さなんかを学んでもらえたらなと思います。子供たちはこれから少なからず辛いことや苦しいことに対面するはずですから、相撲甚句で培ったことがいつか役に立てたらいいですね。
ぎょろめ:そうですね。それでは下家さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
ふとめ:ありがとうございました。
下家さん:ありがとうございました。

つながる

墨田区

恒例の「人つながる墨田区」ポーズで幕を閉じた輪旅第八弾。
鳳凰図の知られざるタイトルの意味を知ることができました。
明日誰かに話したくなりますね。
下家先生、墨田みどり保育園の皆さまありがとうございました。
次回の輪旅第九弾は5月下旬更新予定!お楽しみに!

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